筑波精工株式会社(Tsukuba Seiko Co,.ltd.)

静電チャックとは

そもそも静電チャックとは何か

静電チャックイメージ

「チャック」とは、世界中で広く利用される対象物や切削工具を固定するツールの事です。例えば万力のようにワーク(加工対象物)を挟みこんで固定する工具や、工作機械に切削用のドリルの歯を固定するドリルチャックなどが代表的な例です。「静電チャック」は、ワーク(加工対象物)と電圧を印加した電極間に発生したクーロン力によって吸着するツールのことで、対象物を固定する目的で利用するツールという意味では、万力やドリルチャックと同じですが、加工対象物を広い面積で均一な力で吸引する為、万力やドリルチャックでは取り扱えない繊細で脆い対象物を固定する場合に最適な特性を備えています。

静電チャックの2種類の作動原理

静電チャックイメージ

静電チャックの吸着方式には、誘電体として絶縁材料を使用するクーロン力型と、ワークと誘電体界面の小さなギャップに微少電流が流れ、帯電分極して誘起されるジョンソン・ラーベック力型があります。

他の作動原理によるチャックとの比較

静電チャックイメージ

静電チャックによる吸着は吸着面全面に均一に働く電気的な力により吸着する為 ワークへの物理的ストレスがかかりにくいメリットがあります。
このため今では薄く繊細なワーク(半導体ウェハ・ガラス・金属箔・フィルム)の吸着固定用として先端エレクトロニクス製品の生産現場で静電チャックが活躍しております。
これに対して、従来より製造現場で広く利用されている「メカチャック」や「バキュームチャック」は ワークの取りまわしに繊細さを求めない場合に多用されており、ワークの性質によりこれらが使い分けられています。
メカチャックは機械によりワークを固定するので物理的ストレスがかかりワークが破損・湾曲する事があります。バキュームチャックはポンプにより真空状態を作り出すことでワークを固定する為、ワークを均一に保持することができない場合や、ワークに吸着痕が残るなど、ワークの性質により導入が困難な場合があります。

筑波精工の静電チャックの吸着原理

静電チャックイメージ

長年の研究開発により最適化された静電チャック内部の電極に電圧印加し、ワークの吸着面界面に電界を集中させます。この電界により、ワーク中に存在する+イオンと-イオンが分離し、+イオンが電極負極に、-イオンが電極正極に接近します。
+イオンと電極負極間、-イオンと電極正極間に強いクーロン力が発生し、吸着します。ワークに対して電荷を与えず、元から存在するイオンを分極するのみの為、ワークの静電破壊が発生しません。

筑波精工の静電チャックの3つの特徴

特徴1:幅広い対象物

ガラス・フイルム・紙・極薄ウエハ等も
吸着可能

電極の最適化により、吸着対象を選びません。そのため、既存の静電チャックでは取り扱えなかったガラスなどの絶縁体素材や、極薄ウエハ等の半導体分野でも利用することができるようになりました。また、多孔質材質のワークもサイズに依存することなく吸着できます。

半導体ウエハ

半導体ウエハ

ガラス

ガラス

穴空・多孔質材

穴空・多孔質材

フイルム

フイルム

金属箔

金属箔

紙

特徴2:強力な吸着力

強い吸着力で
安定した搬送を実現

電極の最適化により、吸着面に均一に吸着力を発生させます。そのため、脆い・ヒビ割れしやすい・しわになりやすい、従来のバキュームチャックやメカチャックでは吸着が難しいワークや、反りが発生したワーク、極薄ウエハ等の半導体分野、既存の静電チャックでは取り扱えなかった絶縁体素材でも利用することができます。接触界面を分極するだけなのでワークに形成された電子回路を破壊する心配もありません。

特徴3:給電ユニットなしでも吸着維持可能な製品も

給電ユニットなしで吸着維持するため
既存の製造ラインへ組込が可能

一般的な静電チャックが給電ユニットを常時接続して吸着力を維持するのに対して、筑波精工の静電チャック「Supporter」は給電ユニットを外しても吸着力を維持することができます。
給電ユニットを用いて一度電界をかけると保持力は半永久的に維持され、対象物を 「Supporter」から分離する際にはもう一度給電ユニットを用いて電界を解除すれば、いつでも分離することができます。

静電チャックの得意なこと・不得意なこと

得意な分野

薄いワーク・脆いワーク・多孔質ワークの吸着固定

薄いワーク・脆いワーク・多孔質素材のワークはメカクランプや真空チャックなどの従来のチャック方式では、吸着固定が困難でした。
その理由は、ワークを割ったり傷をつけてしまったり、吸着痕が付いたり、しわや反りが生じたり、多孔質素材は、エアー漏れで吸着できない為です。
静電吸着方式の静電チャックは、吸着面全面に均一な吸着力を発生する為、従来のチャック方式による吸着力が不均一な為に発生するこれらの問題がありません。
更に、半導体ウェハなど薄いワークで発生する加工後の反りに対して、均一に吸着することで 反り矯正ができるため、平面化した状態で加工を継続することが可能です。
不得意な分野

濡れたワーク、厚みが厚く反ったワーク

ワークが濡れている場合や、ワークの厚みが厚く反っている場合は、静電吸着固定が困難です。

当社の静電チャックの主なターゲット市場

車載パワー半導体市場

その1:車載パワー半導体市場

EVなどのバッテリー駆動の自動車では、充電せずに走れる車の航続距離をガソリン車同様に伸ばすことが求められています。
この為、EVのバッテリーの消費量を抑えるための要として、IGBTやMOSFETといった車載パワー半導体のエネルギーロスの極限までの低下が業界の重要課題と認識されています。
当社「Supporter」をパワー半導体の製造ラインに投入することにより、極薄半導体製造を可能とし、よりエネルギーロスが少ない高性能なIGBTやMOSFET製造を実現してまいります。

5G通信/IoT関連市場

その2:5G通信/IoT関連市場

5G通信/IoTに求められる条件は、超高速通信、超多数端末接続、超低遅延等と言われています。
これらを実現する為に、新しい通信用デバイスとしてガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)デバイス、シリコン、シリコンゲルマニウム(SiGe)などの素材のデバイスに生産技術の壁の突破が求められています。
当社の「Supporter」は素材の違いを超えてあらゆる薄い素材を安心・安全に吸着保持して加工できる未来のハンドリングツールとして注目されています。

ディスプレー関連市場

その3:ディスプレー関連市場

ディスプレイ市場においては、OLEDの登場で省電力化が進みモバイル製品を中心にディスプレイ市場の主力になっています。
近年はスマートフォンやスマートウォッチなど搭載製品の小型化や薄化により更なる省電力化が求められ、次世代ディスプレイとしてミニLEDやマイクロLEDが期待されています。
各種ディスプレイ共に基材の薄化や低コスト・高品質な薄膜形成が求められるため、これまで蓄積してきた当社の技術を生かし、ディスプレイ市場の飛躍に貢献してまいります。